同時に、やすりの形状についても試作を繰り返した。表面の目の形状と樹脂の種類を何種類も組み合わせ、3Dプリンターで試作。1年かけて、猫がいちばん気持ちよくなる組み合わせを追求した。
こうして2016年、最終形態の試作品が完成。この時はまだ、商品化は決定していなかったが、同年2月、ギフトショーに出店した際に試作品がメディアに取り上げられたことから商品化を決断。クラウドファンディングで出資を募った。「ただ猫が気持ちよくなるだけの商品に需要があるだろうか…」と懸念していたものの、想定以上の出資額が集まった。「うちの猫が気持ちよくなってくれる、それだけで嬉しい」という猫に尽くしたい愛猫家は、予想よりはるかにたくさんいたのだった。
また、商品化をするにあたり、金型を作らなくてはならない。繊細な目を再現するためには高い技術力が必要な上に、通常の商品の2倍の金型代がかかる。クラウドファンディングで集めた資金はこの金型代としても活用された。
2017年に発売されると、目標の5000本をすぐに達成した。1本3780円と決して安い商品ではないものの、ギフト需要や“猫に尽くしたい”という愛猫家の心をがっちり捉え、人気商品となった。
愛猫のグーガは『ねこじゃすり』を取り出すと、自ら寄ってきて「撫でて」とおねだりするという。また、最初は人に近づいてこなかった保護猫も、『ねこじゃすり』を通して触れ合ううちに、心を開いてくれた猫が何匹もいたそうだ。もっと猫と仲よくなりたいと思っている猫好きさんたちはぜひ、手に取ってみてはいかがだろう。
※女性セブン2019年2月28日号