そんなAさんだが、最近一番驚いたというのが“宛名の色”だったという。
「領収書に書く文字の色は、ボールペンやサインペンなど消えないもので黒、黒でなくても濃紺くらいまでが一般的だと思うんですが、赤で書かれたことが1度だけありました。私は“赤で名前”って、絶対やっちゃダメって刷り込まれて育ったので、本当にびっくり。黒で再度書いてもらいました。赤がどうとかではなくても、こういうものに書くときは“黒”って、どこかで教えてあげないと……」(Aさん)
フリーランスや自営業者だけでなく、会社員でも経費精算に領収書は欠かせない。都内在住の30代男性会社員・Bさんも、Aさん同様の困惑経験がある。
「弊社の社名は少し読みづらい漢字が一文字入っているのですが、説明すれば大抵は問題ありませんでした。でも、何事もなかったようにそこだけ平仮名で書かれたり、『漢字がわからないので平仮名にしました』と堂々と言われることも。あと、社名を伝えるときに『前株で』(※社名の前に「株式会社」がつく)と言うと、社名の前に『まえかぶで』と平仮名で書かれた領収書を渡されたこともあります。
但し書きについても、難しい漢字ならまだしも、普通に“文房具”とか“清掃用品”といった漢字を書けず、スマホで調べるので時間がかかる。挙げ句“文防具”と書き間違いされ、領収書を再発行する羽目になったこともありました」
こうした領収書にまつわる苦情を、接客業で働く30代女性のCさんはどう思っているのだろうか。実情を語ってくれた。
「領収書は、あくまでビジネス上のもので、若い世代が触れる機会は少ない。そのため、アルバイトには領収書の存在からまず説明します。中でも漢字がわからない場合は、口頭で何度も確認するよりも、『こちらに書いて頂けますか?』などとメモとペンを渡し、確認を促すよう教えています。お客様の中には、ご自身の名刺や宛名と但し書きが書かれた自作カードを提示される方もいて、非常にありがたいと思っています。お手数ですがご協力いただけると幸いです」
領収書をもらうために、まず自分で社名と但し書きを書いたメモを渡さなくてはならないのは一見手間に思えるが、トラブル防止のためにはもっとも有効なのかもしれない。