財産の分け方を自筆で書き残すのが自筆証書遺言だ。その名の通り本文は「親の自筆」でなければならないが、「財産目録の作成」については今回の法改正により、作業を子供が担えるようになった。
「目録はパソコンで作成する方法のほか、預金通帳や登記簿謄本のコピーでもいい。ただし、各ページに親本人による署名と押印が必要で、ここは子供が代行することはできません」(同前)
公正証書遺言の場合、財産を把握したら必要書類の準備に入る。提出が必要なのは、「遺言者本人の印鑑登録証明書(マイナンバーカード)」「相続人との関係がわかる戸籍謄本(改製原戸籍)」「本人の実印」「登記事項証明書」「固定資産評価証明書(自治体から送られて固定資産税の納付通知)」「通帳の写し」と多岐にわたり、ここは子供の積極的なサポートが有効だ。
印鑑登録証明書は本人が自治体の窓口に足を運ばなくとも、印鑑登録証さえあれば子供が手続きできる。他の書類は親の委任状が必要となるものもある。
作成当日に、公証役場に行くのはあくまで親本人。施設に入居しているなど、親が出歩くのが難しい場合、日当と交通費を支払えば公証人への出張依頼もできる。
「当日は相続人ではない証人2人の立ち会いが必要ですが、有償で弁護士や司法書士に依頼することが多い。公証役場で子供が相談すれば紹介してもらえます。子供も同行できますが、作成の段階で別室に移り、立ち会うことはできません」(同前)
様々な局面で子供の出番が多くなるが、川崎相続遺言法律事務所の小林賢一弁護士は注意を促す。
「とりわけ兄弟がいる場合、より深く関わった1人に有利な内容になっているのではないかと他の兄弟が疑念を抱くことが少なくない。トラブルを避けるにはステップを進めるごとに、その都度、兄弟間で情報共有しておくのがよいでしょう」
※週刊ポスト2019年3月8日号