会社が残業に関する労使協定(いわゆる三六協定)を結ばなかったり、協定を結んでいても形式だけで、従業員の出退勤時刻を把握する体制を整えず、結果的に職場の管理職が時間外労働の有無や程度を確認できずに、時間外労働に対する残業代の請求が円滑に行なえる制度がなかった場合にも不法行為になるとした裁判例があります。
不法行為になる場合は、支給を受けなかった残業代相当の金額の損害を被ったものとして、損害賠償請求ができます。この不法行為に基づく損害賠償請求権の時効は損害を知ったときから3年です。要するに、悪質な職場であれば、2年以上前までの残業についても請求できることになります。ただし、知ってから3年を経過した分は時効になり、会社が支払いを拒否すれば、どうにもなりません。
待っている間にも時効期間は経過していきます。残業していた日数や時間を整理し、残業時間がわかる資料とともに、当時の給与の支給明細などの資料も揃え、弁護士会の法律相談などを受けるよう、お勧めします。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2019年3月15日号