心療内科では、抗うつ薬を処方された。それを飲み始めたら、確かにユリコさんは明るく元気になり、少し活発になった。その様子をみて、ハナさんは「なんだ、うつだったのか」と、心のどこかでほっとしていた。
だが、ユリコさんは後に「うつ病」ではなかったことが判明する。ユリコさんが心療内科に通うようになって3か月ほど経った頃のことだ。ユリコさんは医者のすすめでテストを受けた後、大きな病院で脳のCT検査などをすることになった。結果は「若年性認知症」だった。
実際、認知症の初期症状として、集中力の低下や物忘れといったうつの症状が現れることは指摘されている。しかし同時に、「うつ病」なのか「認知症に伴ううつ症状」なのかは、医者であっても見極めが難しいともいわれている。次回は、ユリコさんが若年性認知症と診断されるまでの経緯を詳しく振り返る。