年金制度は複雑怪奇。ある専門家は、「受給者が『申請ミス』をすれば、国は年金を払わなくて済むから、わざと制度をわかりにくくしている」と指摘するほどだ。実際にはどんなことが起こっているのか。夫と2人暮らしで年金生活をする70才主婦の花田さんが語る。
「これまで年金のことは夫に任せきりでした。『ねんきん定期便』が届いても、ほったらかしで。ある時、友人に『それって、本当に大丈夫?』と言われました。聞くと、友人は結婚前に加入していた分の未払い年金を取り戻したうえ、毎月の年金額も増やせたそうです。
もう何十年も前の話ですが、私も短い期間、OLをしていたことがありました。もしやと思い年金事務所に確認すると、案の上、記録が抜けていた。すぐに申請したら、次の年金の振り込みと一緒に40万円ほど戻ってきました。死ぬ前に気づいてよかったです(笑い)」
花田さんのように、未払いの年金があることに気づかないまま放置する人は多い。
年金は自分で申請しない限り受け取れない「申請主義」だ。年金の受給開始年齢は原則65才だが、その日が来ても自動的に支払われることはなく、自ら年金請求をして初めて受給できる。花田さんのように年金の記録漏れがある場合も、自ら動かなければ1円も受け取れないのだ。なんとも不親切な制度なのである。