全国各地で“バンクシー騒動”が持ち上がっている。バンクシーはロンドンを中心に活動するグラフィティ(=落書き)アーティストで、過去には作品に数千万円の値が付いたことも。そのバンクシーのものらしき作品が、東京港区の防潮堤を皮切りに、千葉県印西市、香川県高松市、兵庫県西宮市などで相次いで発見されている。
1月には小池百合子都知事が、港区で発見された“バンクシーのものと思しき作品”を撮った写真をSNSで公開し、「東京への贈り物かも?」とコメントするなど、正体不明の落書きを礼賛する風潮も出てきているようだ。だが、都内で貸しビル業を営むEさんは、こうした風潮に怒りを隠さない。
Eさんは、渋谷区でもとりわけ若者が多く集まる地域に貸しビルを持つ実業家。ビルには飲食店、アパレル、オフィスなどが入居しており、空き部屋は1つもない優良物件だ。Eさんがバンクシー騒動で怒りを覚えたのは、貸しビルの落書き被害が酷いからだ。Eさんはいう。
「ウチのビルは裏通りにあり、決して大きくはありませんが、三方が道路に面しているため、落書き被害は甚大です。かつては暴走族がやったようなものが多かったですが、最近は意味不明の記号のようなものばかりです。放っておくとどんどん増えてしまうので、見つけたらすぐに消しますが、巨大なものでは消すのに20万円近くかかったこともあります。
シールを貼られる被害も多く、テナントの室外機に一晩で200枚近くシールが貼られたこともあります。これを剥がすのにもかなりの費用がかかります。また、バンドのライブや劇団公演のビラなどが貼られたこともありました。ビルは完成から40年以上経っていますが、これまで落書きを消したり、シールを剥がしたりするために使った費用は、1000万円は下りません」(Eさん)