樹木さんは、女優になりたての21才で初めて東京・大田区に戸建てを購入し、その後も忙しい合間を縫って物件を見学しては、不動産の売買を続けた。
娘の也哉子と本木雅弘(53才)夫妻にもマンション購入を熱心に勧め、仲のいい浅田美代子(63才)には、「60過ぎた独身女に部屋を貸すところなんてないのよ」という“殺し文句”で物件を買わせたという。浅田に大きな仕事が入るたび「まとめて返済したら」と、住宅ローンの繰り上げ返済を助言していた。
樹木さんは本誌が把握しただけで8軒の不動産を所有。合算すると総額10億円を軽く超えるとみられる。
これほど大きな遺産があると、死後の相続は複雑になりがちで、多額の相続税がかかったり、親族間でトラブルが起こることも珍しくない。樹木さんの場合はどうだっただろうか。
樹木さんの死後、都内にある3つの戸建て物件は相続により名義が也哉子に変更された。マンションの所有者も樹木さんから本木や孫の伽羅(19才)に変わった。
「樹木さんはかなり上級者。まさに賢い相続です」と指摘するのは、相続コーディネーターの曽根恵子さんだ。
「まず、空き家のいくつかを賃貸にしていますね。賃貸業は200平米まで土地の評価が50%減額され、相続税を低く抑えられます。相続した賃貸契約はそのまま引き継がれるので、飲食店に貸し出している戸建ての家賃収入は、樹木さんから名義変更した也哉子さんに入ることになります」(曽根さん)
法定相続人である夫の内田裕也さんを名義にした物件が1つもないことにも注目だ。
「本来、配偶者である裕也さんが不動産を相続すれば、1億6000万円まで非課税になる『配偶者控除』によって大幅に節税できます。
ただしその後、裕也さんに万一のことがあったら、娘の也哉子さんらは『二次相続』で相続税の金額がハネ上がることが危惧されます。実際、高齢の夫婦間で相続を行うと、遺された配偶者も後を追うように亡くなって、短期間で煩雑な相続の手続きを2度もしなければいけなくなったケースも多い。