親の死後に自分が、あるいは自分の死後に家族が、慌ただしい中で進めなければならないのが相続の手続きだ。「どんな準備・対策が必要か」を指南する情報は数多くあるが、実は最も大切なのは「いつ、その対策をやるか」ということだ。
まだまだ元気と思っていた親が、正月に久しぶりに顔を合わせるとずいぶん衰えていた。近い将来に「その時」は訪れるかもしれない……。そんな現実を直視して、時間的な余裕があるうちに進めたいのが相続税対策だ。
生前贈与「早くやれば節税メリット大」
預貯金などの金融資産が多い親ならば、考えておきたいのが配偶者や子供たちへの生前贈与だ。円満相続税理士法人代表で税理士の橘慶太氏が指摘する。
「特に税制上のメリットが大きいのは、一人あたり年間110万円までの贈与が非課税になる暦年課税制度です。例えば、上限110万円を10年間にわたって子供などに贈与すれば1100万円が非課税ですが、同じ額を一括贈与すると税率30%(控除額90万円)で207万円の贈与税がかかります」
暦年課税制度を使って、できるだけ死亡時の財産を減らしておけば、相続税の節税メリットも大きくなる。
ただし注意すべきは“タイミング”だ。贈与者が亡くなった場合、その時点から「過去3年分の生前贈与」は相続財産に持ち戻され、相続税の課税対象になる。
「このため、生前贈与は亡くなる3年前までに済ませておくことです。もちろん、いつ亡くなるかはわかりませんが、長期にわたって計画的に贈与するには、遅くとも70歳くらいから始めておきたい」(橘氏)