半世紀にわたって『笑点』(日本テレビ系)に出演し、昭和から平成のお茶の間に笑いをもたらした桂歌丸さんは昨年7月、惜しまれながら亡くなった。享年81。愛妻家で、独自の美学と趣味に生きた人生だった。
若い頃からたばこを1日50本以上吸うヘビースモーカーで、2009年に肺気腫を患ってからは肺の疾患に苦しみ、2018年7月に慢性閉塞性肺疾患で往生を遂げた。一番弟子の桂歌春(69才)が語る。
「長く肺を患って、亡くなる前は苦しそうに肩で息をしていましたが、遺言めいた話は聞いたことがない。最後の最後まで、高座に復帰することを意識していました」
「桂歌丸」の名を誰に継がせるかについても、固く口を閉ざしたままだった。
歌丸さんは21才の時に家族の反対を押し切って4才年上の妻の冨士子さんと結婚してから、長女と長男を育て、晩年はひ孫にも恵まれた。『笑点』では「文句を言うと、女房に出刃包丁で追いかけられた」などの「鬼嫁ネタ」が鉄板だったが、実は仕事が終わると一刻も早く妻の待つ家に帰りたがった。そんな歌丸さんは、多趣味の人でもあった。
「モノを集めるのが大好きで、カメラや釣り道具、化石まで収集して、山ほど持っていました。手塚治虫さんの大ファンで、『手塚先生の作品は全部持っている』が自慢のタネでしたね。あまりにコレクションの数が多いので、自宅とは別に収納用のマンションを持っていたほどです。息子さんは遺品をすべて処分すると言っていましたが、残していても、『歌丸ミュージアム』を作るほかに用途がないですからね(笑い)」(歌春)