東証が市場再編を急ぐのは、「一部上場企業が増えすぎたことが理由」だとマーケット・アナリストの平野憲一氏は指摘する。
「かつて一部に直接上場する基準は時価総額500億円以上だったが、リーマン・ショック後の2012年に250億円以上まで引き下げられた。そのうえ、二部やマザーズから一部に内部昇格する場合は“時価総額40億円以上”とさらに基準が緩くなったため、一部上場企業が急増したのです」
しかも、いったん一部に上場すれば「時価総額10億円未満で株主数が2000人未満」になったり、債務超過に陥ったりしない限り、二部に降格することはない。
その結果、上場企業数(3月20日時点)は、一部が2139社、二部が492社、ジャスダックが720社、マザーズが280社と、一部上場が全上場会社の約6割を占める“逆ピラミッド”になっている。
「プレミアム市場」の基準は?
そうした最上位市場の“絞り込み”が狙いとされる以上、「一部」に代わる「プレミアム市場」への上場基準をどこに据えるかが最大の焦点となっている。経済ジャーナリストの和島英樹氏はこう見る。
「新基準は当初、時価総額1000億円が足切りラインとみられていましたが、既存の一部上場企業の猛反発が予想されるため、激変緩和措置として500億円にするのではないかという話が浮上。さらには現在の直接上場基準である250億円で落ち着くのではないかという話も出てきた」
日本取引所グループは「有識者会議の報告書をいつ提出いただけるかも決まっていません。再編を行なう、行なわないという発表についても、予定は決まっていません」(広報・IR部)とするが、市場関係者の間では情報が錯綜している。
3月に入り、大手証券会社の営業部員が取引先の機関投資家に「有識者懇メンバーとのやり取りで『指定基準は250億円になる』という感触を得た」といった内容のメールを送っていたことが報じられた。“どこが線引きになるか”が注目の的となっているのだ。
プレミアム市場の上場基準が時価総額で「1000億円以上」「500億円以上」「250億円以上」となった場合、それぞれどんな有名企業が“一部から降格”となるか。
仮に時価総額「1000億円」が“壁”となれば、ワタミ、テレビ東京HD、永谷園HDといった有名企業を含む、一部上場企業の約7割にあたる1400社が降格し、上位700社強しか「プレミアム市場」に残れないことになる。これが「500億円」なら約5割(約1100社)、「250億円」でも約3割(700社以上)が降格となる見通しだ。