昨年10月、東京証券取引所を傘下に持つ日本取引所グループが有識者懇談会を設置。現在の市場区分を見直す議論に着手し、「3月末を目途に答申がまとまる」とみられている。現在、東証には「市場第一部」「市場第二部」、新興市場の「ジャスダック」「マザーズ」の4市場があり、企業価値を示す時価総額(株価×発行済み株式数)の基準は一部で250億円以上、二部で20億円以上と定められている。
目下、議論されている市場再編は、最上位を「プレミアム市場」、それに続く「スタンダード市場」、そして新興企業向けの「エントリー市場」の3つに区分し直すものだという報道が相次いでいる。上位市場への昇格基準も厳格化され、最上位市場への上場企業数は厳しく絞り込まれる方針だという。
「プレミアム市場」に入れるかで、企業の株価は大きな影響を受けると考えられる。現在、東証一部に上場する企業がプレミアム市場に留まれば、外国人投資家を含むファンドの買い増しにより、株価上昇も期待できるだろう。一方、除外された企業の株は大きな売りが出ることは想像に難くない。
問題は株価だけに留まらない。最上位市場からの「降格」は経営陣にとっても社員にとっても憂き目に遭うことを意味する。過去に東証一部から二部に降格した企業の例を見てみよう。
巨額の損失隠しの末に債務超過に陥り、2017年8月に二部降格した東芝。株価は不正会計の発覚で2016年末に急落。その後、緩やかに回復したが、二部降格が決まって再び急落した。株式市場を通じて長らく日本企業を見てきた株式アナリスト・植木靖男氏が言う。
「降格による先行きへの不安感が株価を押し下げることになり、二部落ちで新規採用がさらなる苦戦となった。流出した多くの優秀な技術者のなかには、降格をきっかけに辞職を決意した人も少なくないでしょう。社員にとっても、二部から一部に昇格した時とは正反対の“信用失墜”となるわけです」