富裕層が数多く暮らす、東京・港区の麻布界隈。そこに住む“麻布妻”の中には、「富裕層ならでは」の理由で、やけにポジティブな女性がいるという。だが、そのポジティブさが、ママ友の間で軋轢を生むこともあるらしい。自身も麻布妻でライターの高木希美氏がリポートする。
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富裕層が多い麻布妻によくいるのが「ポジティブママ」です。お嬢様で苦労知らず、子育てもシッターサービスなどを利用し、時間を作ってはネイルやエステなど「自分磨き」が大好き。そんな生活をしているからか、とにかく何にでもポジティブシンキングなのです。その人の生活にとってはポジティブはいいことなのでしょうが、周囲をイライラさせることがあります。
その一例を紹介しましょう。旦那さんが売れっ子弁護士で、芸能人も住むマンションの最上階に住んでいる麻布妻のマナさん(30代前半。仮名、以下同)です。マナさんも交えて私の友人たち数人で集まっているとき、よくある「夫の愚痴トーク」になりました。
マチコさんが「この間、イヤイヤ期の娘の不機嫌モードに2時間付き合ってて、我慢の限界が来て怒鳴っちゃって。そしたら横にいた夫が『相手は子供なんだから冷静になれよ』って正論で諭して来て!」と言うと、一同が「横にいたなら旦那さんがなんとかしろよ」と突っ込みます。それを機に、「わかる、旦那って大して育児手伝わないくせに、めちゃくちゃわかったような口調で上から言ってくるからむかつくよね」「24時間×1週間くらいワンオペしてから言えよって思う」と堰をきったようにママたちの愚痴大会が始まりました。
「ヨーグルトをひっくり返した息子を怒ってたら、夫は笑ってて。そんなんで怒るなんて余裕なさすぎだろって言われて! 笑ってるなら拭いてよって思った!」
「うちは夜泣きが凄くて寝不足で、3日くらい寝られていない日に夫に『死ぬほどつらい』って言ったら、俺も今週寝不足って言われて。あなたの寝不足はサッカー観戦だろ!って」
「頭痛ひどくて、今日オムツ替え手伝ってと言ったら、俺も頭痛いって。男ってなんで“俺も”って言うわけ?」
次々と愚痴が飛び出します。
そこに麻布妻のマナさんが含み笑いしながらこう言いました。
「みんなそんなカッカして体に悪いよ。マチコさんは2人め妊娠中でしょ? せっかくのマタニティライフなのにイライラして、赤ちゃんがかわいそう」
「私は日々、感謝してるの。ポジティブなことしか言わないって決めてるから」
「うちの旦那は本当に穏やかだから助かっているのもあるけど、みんなみたいにそんな愚痴ってないなー?」
「日常にそんなイライラして大変だねぇ。でも今日はいい天気だからいいじゃん」