「離婚女性に特化した不動産会社を設立したのは、自分自身の経験がきっかけでした。私もバツイチのシングルマザーなんです」──こう話すのは、離婚女性専門不動産『アベリア』代表の緑川陽子さん(45才)。7年前、別居を経て離婚。2人の娘を連れ、新たな人生の一歩を踏み出した。
「その際、中古の戸建てを購入したんですが、不動産会社のおじさんから“養育費はどっちが払うの?”とか、“慰謝料は?”と、根掘り葉掘り聞かれたんです。今思えば、住宅ローン返済のめどなどを考え、親切心からだったとは思いますが、当時は屈辱的な気分になりました。
ただでさえ離婚でエネルギーは消耗しているしブルーなのに、離婚女性はこんなイヤな思いをしながら再出発しなければならないのか…と」(緑川さん・以下同)
相手が男性でなく女性なら、もっと気兼ねなく不動産探しもできる。それが会社設立のきっかけとなった。そんな緑川さんの半生は、タフにしてパワフルそのもの。緑川さんの専業主婦から今日までのヒストリーをたどらせてもらった。
短大を卒業後、20才で6才年上の元夫と結婚。22才の時、憧れのマイホームも購入した。ところが…。
「ご近所トラブルが原因でストレスが溜まってしまい、家を手放すことになったんです。“まあ、売ったお金で新居を見つければいいや”と考えていたんですが、これが甘かった。オーバーローンで赤字だったんです。赤字補てんできるお金もなく、いったん売却をあきらめることに。それから3年間コツコツと節約を積み重ね、赤字補てんの500万円を貯蓄。次の家を購入する気力もなく、賃貸の戸建てに引っ越しました」
“無知って怖いな”という経験から、合格率約15%といわれる宅建(宅地建物取引士)の資格取得のために猛勉強。
「ママ友たちの間で“宅建免許を取っておくと主婦でも就職時にいいよ”とも聞いていましたし。夜、子供たちを寝かしつけてから過去10年分の問題集を解いたりして学びました」
結果は一発合格。社会と自分の間を隔てた壁が、少し薄くなった気がした。
「短大を卒業してすぐに家庭に入ってしまったので、自分自身のなかにどこか悶々としていた部分があったんです。子供が幼稚園に通い始めた頃から、コンビニやファミレスなどのパートで働くようになったんですが、◯◯ちゃんのママと呼ばれていた自分が、“緑川さん”と、呼ばれることも快感でしたね」