日本人は世界に知られた「貯金好き」だ。アメリカ人は家計資産の約半分を株などの「投資」に回し、「現金・預金」は15%弱しかない。日本人はその真逆で、約52%が現金・預金で、投資には20%弱しか使っていない。
それは戦後、復興資金を確保するために国が「救国貯蓄運動」を展開したので、国民に「貯金は美徳」という感覚が根付いたからだ。1980年代後半にバブルに浮かれた手痛い失敗も、影響しているだろう。日本人の「投資嫌い」もまた、筋金入りなのだ。
しかし、昨年1月からスタートした投資の新ルール「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」は、利用者が殺到し、口座開設数はたった1年でたちどころに100万口座を突破。1人1口座しか持てないので、100万人が投資を始めたことになる。貯金好きの日本人がなぜ今、こぞってつみたてNISAを始めているのか。神奈川県在住の48才主婦・堀田さんが話す。
「公的年金はこれからどんどん目減りするというので、あてにできません。自分で老後資金を作らなければなりませんが、投資は難しそうだし、損もしたくない。だからと言って、銀行に預けていてもほとんどお金は増えないし…。何かいい方法はないかと探していた時、息子に教えてもらったのがつみたてNISAでした。毎月3万円程度と大きな元手も必要なく、運用して得た利益に税金がかからないのが決め手でした」
ファイナンシャルプランナーの山中伸枝さんが話す。
「つみたてNISAとは、少額からの長期積み立て投資を支援するための非課税制度のこと。1人が1つだけ作れる専用口座を通じて、毎月一定額を、投資信託などの対象の金融商品に積み立てて運用します。
最大のメリットは、運用で得た利益や分配金が課税されないことです。通常なら約20%の税金がかかるところ、利益を丸ごと受け取れます。非課税投資枠は年間40万円、期間は最長20年間です」
投資信託とは、お金を専門家に預けて、手数料を払って自分の代わりに専門家が株式や債券などに投資・運用を行う金融商品のこと。月に最低100円から積み立てでき(金融機関により異なる)、非課税枠を最大限利用するなら、月3万3000円となる。山中さんが続ける。
「現在、投資信託は約6000本もあり、どれに投資したらよいかわからない人も多いでしょう。しかし、つみたてNISAなら、手数料が安く長期投資に適した優秀な商品162本(2018年10月末時点)を、あらかじめ金融庁が厳選してくれています。国が投資を促すために導入した制度だからこそ、中長期的に利益が期待できる、国のお墨付きの商品ばかりが選ばれているのです」