怒り狂ったHさんは、後日正式に抗議するため、名刺を出すよう求めた。銀行の店長はすぐに名刺を出したが、2人の警察官(刑事?)はのらりくらりと名前を言うことさえためらい、名刺は「持っていない」の一点張り。結局名刺は出さなかった。
警察官は“取り調べ”の最中、「すいません、多いんですよ、本当に」「実は午前中も1件、捕まえてきたばかりなんですよ」などと話したが、息子はこれも疑った。自治体によっては、HP上で、地域で起きた犯罪発生情報を公開している。家に帰って息子が調べると、管内で、その時間帯に振り込め詐欺事件は発生していなかった。警察官は、Hさん親子の怒りを鎮めるためにウソをついたのではないか、と疑念は拭えないという。
Hさんはこう語る。
「振り込め詐欺の電話がかかってきた時、囮になる話を警察に断られたことは仕方ないと思っています。危ない目に遭うかもしれませんから。しかし銀行で足止めされた件は、どう考えても納得がいきません。預金金利だってゼロみたいなものですし、自分のお金を好きな時に使えないなら、銀行に置いておく意味がまったくないじゃないですか」
Hさんは抗議の意味で、その銀行から預金をすべて引き上げたという。銀行や警察は、「お年寄りのため」「犯罪を防ぐため」と主張するだろうが、その一方で、高齢者たちからは「お金をおろす自由」が奪われていることへの不満の声が出ているようだ。