「仮に60歳の定年後の20年間、車に乗るか乗らないかの違いで考えてみましょう。毎年かかる経費に加えて、20年間ずっと同じ車に乗り続けることは考えにくいので、新車代金200万円のコンパクトカーを10年で買い換えるとする。そうなると車を手放す選択によって、20年間で1400万円もの支出をカットできることになるのです」(同前)
免許の自主返納により、数年ごとの免許更新にかかる費用や手間を省くこともできる。その上、返納後に受け取れる「運転経歴証明書」を利用すれば、バスやタクシーの利用割引のほか、様々な特典が受けられる(自治体によって異なる)。
たとえば東京都では、大手百貨店、スーパーなどの自宅への配送無料サービスが受けられる。買い物した品を持ち帰るのに車でなければ不便と思いがちだが、その不安を解消できる可能性もあるのだ。
免許返納をしないまでも、マイカーの代替手段として「カーシェア」も普及してきた。システムはレンタカーと同様だが、短時間の利用を想定しているため、より安価で使用できる。月6回、1回4時間ほど利用してもかかる費用は月に約2万円。
単純計算で年間24万円、マイカーがないぶん電車やバスを使うことが出てきたとしても、年間30万円ほどで済ませられるはずだ。自家用車を持つことによる年間50万円の負担とは大きな差が出る。
「車は所有せずに必要な時だけ使う、という考え方にスイッチするだけでも、大きく出費を削減できます。現役世代と違い、定年後は平日に出かけることができるので、休日は枠が埋まりがちなカーシェアを利用しやすいというメリットもあります」(森田氏)
※週刊ポスト2019年4月12日号