夏の参議院選挙を前に衆参W選挙と同時に噂されていたのが、「消費税10%引き上げの見送り」だ。増税による家計への負担を考えれば先送りは歓迎したいが、気をつけたいのはあくまで“先送り”だということ。
いつかは必ずやってくる増税。その一方で年金減額や、介護保険見直しなど、社会保障負担は増えるばかりだ。消費税増税がいつであれ、同時に導入されるのが「軽減税率」だ。
食料品など特定の商品について、消費税を現状の8%に据え置くというもので、その目的は“国民の負担を軽減する”というが、果たしてどうなのか。
そもそも軽減税率はわかりづらい制度だ。対象となるのは酒類と外食を除いた飲食料金や定期購読の新聞などとされているが、「飲食用の水は8%、業務用の水は10%」「アルコール度数の高い『本みりん』は10%、アルコール度数1%未満のみりん風調味料は8%」など線引きはあいまい。現場の混乱も予想されている。経済ジャーナリストの荻原博子さんが言う。
「何が対象で対象外なのか、区分けが難しい。たとえば、ファストフードのお店に入ってテイクアウトすれば8%の税率ですが、店内で食べれば10%。じゃあ、テイクアウトといって買っておきながら、やっぱり店内で食べればどうですか? いくらでもごまかせてしまいます。小さい個人商店では混乱を招き、現場の負担が大きくなるでしょう。
そもそも、軽減税率は貧困層が優遇される制度ではありません。お金を使えば使うほどお得になるんだから、お金を使えない貧困層は得する割合も低い」(荻原さん)
財務省の試算によると軽減税率が導入されることで、年収200万円未満の世帯では年間約8300円負担が軽くなるが、一方、年収1000万円世帯なら約1万5700円の負担が軽減されることになるという。