世界経済の浮沈を握るといっても過言ではないのが、米国の中央銀行に当たるFRB(米連邦準備制度理事会)の政策判断だ。そんなFRBが3月に開かれた米国の政策金利を決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)で「年内の利上げを見送る」と、それまでの金融引き締め(利上げ)から金融緩和(利下げ)をも示唆するような方針へと大きく転換している。
これは好調と目されてきた米国景気の変調なのか。その理由と今後の市場への影響について、グローバルリンクアドバイザーズ代表の戸松信博氏が解説する。
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FRBは昨年12月のFOMCまで「2019年は年2回利上げする見通し」を示していた。ところが、昨年10月初めごろまでは堅調だった米国株が下がり始めたこともあり、当局も気を揉んでいた。そこで今年1月のFOMCで「利上げシナリオの棚上げと資産縮小計画の見直し」を表明。3月のFOMCで、その方向を鮮明にした格好だ。
それまでもFRBは、どちらかといえば景気動向に慎重な見方を示して金融政策の舵を緩和方向へ取る「ハト派」とされてきたが、実際にはインフレ懸念もあるため、利上げや量的緩和縮小という金融引き締めに積極的な「タカ派」的な色彩も帯びていた。しかし、年明け以降は、明らかにより「ハト派」へと転換したのである。
実際、足下の状況を見ると、昨年までの方針を変えることなく3月に利上げしていれば、株価は下落、長短金利が逆転する「逆イールド」がまさに景気後退の予兆となっていた可能性も高かっただろう。ところが、FRBがよりハト派へと転換したことで、市場を取り巻く環境は好転しつつある。