いつの時代も新入社員を迎えるのが、新入社員研修。何か月もかけてみっちりと業界知識を叩き込み、技能教育を行う企業もあれば、社会人トレーニングもそこそこに、新入社員たちを即実戦の場に放つ企業も存在する。社会人の先輩たちに、自身の新人研修の体験談と、そこから得たものを振り返ってもらった。
朝6時からラジオ体操、泣きながら目標を宣言
今年で社会人10年目を迎えた男性・Mさんが入社したのは、超体育会で“古き良き昭和の匂いが残る”建築関連のメーカー。都内近郊の宿泊施設を貸し切って行われた2週間の新卒研修は、毎朝朝6時のラジオ体操からスタートしたという。
「毎朝夜明け間もなく、工場用の作業着で大広場に集合。ラジオ体操を終えると、次は創業者の“経営理念”を全員で唱和します。少しでも遅刻したり、眠そうにしていると、拡声器を持った先輩社員に大声で注意され、最初からやり直し。『ここまでして社会人にならないといけないのだろうか』ということを毎朝考えていました」(Aさん)
社内には新卒を育てる余裕がなかったのか、研修を取り仕切っていたのは外部の研修代行企業。“ゆとり世代”と呼ばれる1987年生まれが多い年で、研修を行うトレーナーの手元には、「ゆとり社員教育マニュアル」と書かれた冊子が用意されていた。実際の研修でも、何かを学ぶといったことより、社会人としての人格形成を主眼に置いた講義が続いたという。
常に連帯責任が求められ、少しでもミスや遅刻があれば、「申し訳ございませんでした!」とグループ全体で大声をあげて謝罪しなくてはならない。そんな研修のクライマックスは、“目標の発表”だった。
「自ら設定した“必ずやり遂げたい目標”を、全員の前で大声で発表することになりました。一人ずつ前に出て、トレーナーから合格がもらえるまで、泣きながら“絶唱”。発表に10分以上かかった人もいました。ただ、絶唱し終えると、社会のなかで生きていかなくてはいけないという意識も高まり、もう学生には戻れないということを、痛感したものです」(Aさん)