資格試験の結果が貼り出される毎日
30代の女性・Sさんは、15年前、大手の外資系IT企業に営業職として新卒入社。新入社員研修について「当時は必死だったが、ブラックだった」と振り返る。
Sさんの会社が行っていたのは、クライアント企業に対し、自社のツールを導入する企画営業。IT知識のほか他社製品についての知識も必要なうえ、一回りも二回りも年上の担当者と向き合うことも多いため、ビジネスマナーだけでなく、クライアントと接する際のコミュニケーション能力も研修で体得していったという。さらに、資格や技能試験への合格なども要求された。
「資格試験は、研修期間以外に自宅でも勉強しないと合格出来ない内容。一番大変だったのが、テストや資格試験の結果が毎週のように貼り出される、ということでした。『家族の命がかかっていると思ったら、ちゃんと勉強するだろ? もっと必死に勉強しろ!』といった強い言葉を浴びることも。とりわけ体育会系出身の男子にはかなり強い言葉が浴びせられていました」(Sさん)
Sさんは、完全成果主義である外資系企業のなかで生き抜くためには必要な鍛錬だったと振り返りつつ、「コンプライアンスに厳しくなった今では、出来ない研修だったと思います」と話してくれた。
宿泊付き研修施設に缶詰で、まさかの展開に
メーカー勤務の40代男性・Yさんは、「宿泊付き研修施設に1か月間半缶詰」だった新人研修で、同期のIさんと恋に落ち、夏前には結婚した。研修終了後、すぐに会社を辞めてしまったIさんとは3人の子どもをもうけたが、結婚6年目、YさんはMBAを取得するため単身渡米。帰国後に離婚した。
Yさんは、自社の新人研修について「今はもう1か月半も缶詰なんてあり得ません。会社にそんなお金もないでしょうし、座学は手短にして、さっさと現場で働いてほしい」とキッパリ。ちなみに自身については「まあ、僕は新人研修があったおかげで結婚し、一旦は家族を得ましたけどね……」と言う一方で、自分が同期とスピード婚したことが、その後の新人研修のあり方に影響を与えてしまったのではないかと少し気にしているそうだ。