多くの人が新生活のスタートを迎えた4月8日、月曜日の朝、小田急沿線の駅は突然のパニックに見舞われた。小田急線は東京・新宿を起点に南西に延び、広大なベッドタウンを横切り、神奈川の藤沢や小田原を結ぶ私鉄路線で、1日の利用客は約410万人に上る。その全線が、午前7時37分ごろからおよそ1時間10分にわたって運転を見合わせたのだ。
今回のパニックの要因は「無線システムのトラブル」とされており、上下線65本が遅れ、約15万人に影響した。駅の改札前はどこも長蛇の列、振替輸送のバス停も黒山の人だかり。町田駅(東京)の行列の押し合いで転倒した人が出たのも、沿線の学校で午前中の授業中止や入学式の時間繰り下げが行われたのも、その朝の「小田急沿線パニック」の氷山の一角だった。
こうしたトラブルが発生した際、私たち乗客も身を守るためには、自身の判断が大切になる。今回のケースでは「それでも電車を待ち続ける」という日本人の特性も明らかになった。
駅が大混乱となり、なかなか目的地に到着できないことは容易に想像できるのに、なぜ日本人は律儀に電車を待ち続けるのか。精神科医の片田珠美さんが指摘する。
「日本人にとって、“朝何時に起きて、何時の電車に乗り、何時に会社・学校に着く”という分刻みの行動が習慣化、固定化されています。余裕がないように見えますが、何も考えなくていい。自分の頭で考える事が苦手になり、いつも通り行列を作ります。
そうした性質は、電車が時間通りに走るのが当たり前の日本だからこそです。遅れるのが当たり前の海外で暮らす人はそうはなりません。さっさと諦めて家に帰るでしょう。また、それが車通勤であれば自分の裁量で時間を調節できますが、電車には自分の主導権がないので“従うしかない”という考えに陥りがちです。こうした無批判的服従の姿勢が染みついているので、いくら電車が遅れていても、並んで待ってしまうんです」