実際、1985~1990年の間に正規雇用者は145万人の増加だったのに対し、非正規雇用者は226万人も増えた。その多くは女性だった。
同時にこの頃、「フリーター」が量産された。「フリー・アルバイター」の略語で、1991年(平成3年)に広辞苑に初めて記載された。
「当時はまだ日本の未来は明るいと思われていたため、正規雇用を選ばず、アルバイトを選択する若者もいました。彼らは『フリーター』と呼ばれ、『人生を真剣に考えているからこそ就職しない人』『夢の実現のために自由な時間を確保しようと、定職に就かずに頑張っている人』と、華やかで楽観的なイメージでした」(橋本さん)
しかしその後、バブルは崩壊。希望溢れるはずだったフリーターは、正規雇用に移ることができなくなった。
「中途退職者をあまり採用しない日本企業の採用慣習のせいで、フリーターからの脱出は難しいのが現実です。特に30才以上となると、脱出は不可能に近い。結果、フリーターたちはそのまま年をとって中高年になっていくのです。
およそ30年の時を経て、フリーターの先駆けだった若者たちは50才前後となり、その多くが正規雇用をほとんど経験することなく現在に至っています」(橋本さん)