中国だけでなくアメリカの消費に与える影響も大きい
一方、もう1つの要因である外部で発生した悪材料については少々深刻である。
トランプ大統領は5日、ツイッターを通じて、「2000億ドル相当の中国製品に対する追加関税率を10日から現在の10%から25%に引き上げる。現在、追加関税措置を課していない3250億ドル相当の中国製品についても、近く25%の追加関税措置を発動する」などと発言した。
6日大引け後に行われた中国外交部による定例会見において、報道官はこの問題について触れ、「中国側は現在、渡米の準備を進めている」とコメントしている。中国側が協議から離れるといった最悪の事態は避けられそうである。
今後の見通しについては、トランプ大統領次第というしかない。
2019年1~3月の貿易の状況をみると、中国のアメリカへの輸出は8.5%減、アメリカからの輸入は31.8%減である。金額ベースでみると、輸出は8464億ドル減少、輸入は13266億ドル減少している。減少幅は輸入の方が大きいので、貿易収支では、中国側の黒字が拡大している。
また、経済成長率は、習近平政権が足元の景気よりも構造改革を重視する政策を続けてきたため、2018年は鈍化傾向を強めていたが、2019年に入り、財政、金融政策について景気に配慮する姿勢を示したことから、1-3月期の成長率は6.4%となり、10-12月期と同じ水準に留まっている。景気の面で、米中貿易戦争の影響は見られない。
それはアメリカも同じである。足元の景気はしっかりしている。3日に発表された雇用統計では、4月の失業率は3.6%で、前月よりも0.2ポイント改善しており、市場予想に対しても同じく0.2ポイント上回った。非農業部門雇用者数変化は、26万3000人で6万7000人多く、市場予想である18万5000人を7万8000人上回っている。
5月3日のNASDAQ総合指数、NYダウ指数がともに、史上最高値付近で推移していることもあり、トランプ大統領は強気の交渉戦略に出たようだ。