実は、この時、サラリーマンの厚生年金保険料が2割も引き上げられた。「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏が語る。
「当時の財政検証で、第3号制度導入で将来の年金給付が増えると計算され、厚生年金の保険料率が10.6%から12.4%に引き上げられた経緯があります」
つまり、第3号主婦の保険料分は夫や独身サラリーマンが分担しているので、決してタダ乗りではない。ところが、年金財政が苦しくなると、厚労省はタダ乗り批判を展開していく。
「第3号廃止」の“2段ロケット”
厚労省は2000年、「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会」を設置し、〈第3号被保険者の中には自分の保険料も含めて夫の給料から天引きされていると誤解している者も少なくない〉(同検討会資料)と指摘。第3号制度の見直し方針を打ち出すと、2002年の社会保障審議会年金部会に、【1】夫の厚生年金を妻と2分割【2】第3号に保険料負担を求める【3】第3号の年金給付を減額する【4】第3号の対象者を縮小していく――という4つの改革案を提示した。
厚労省にとっては20年来の計画なのだ。
以来、第3号制度の見直し問題は5年ごとの年金制度大改革のたびに社会保障審議会などで議論され、そこから出てきたのが「被用者年金の適用拡大」方針だった。これは第3号被保険者をパート主婦と専業主婦に分け、まずはパート主婦を厚生年金に加入させて保険料を支払わせ、第3号の人数を段階的に減らしていくという政策だ。これを進めると、最後に専業主婦が残る。
その先にあるのが第3号制度の「廃止」である。