負担増、給付減の口実に“不公平の是正”というロジック
政府は2015年12月に「第3号被保険者を縮小していく方向で検討を進める」と閣議決定し、この5年間に“ロケットの1段目”にあたるパート主婦への厚生年金拡大を急速に進めてきた。
今年は5年に1度の年金改革(年金財政再計算)の年で、同省はパートの厚生年金加入の収入基準を現在の「月収8万8000円以上」から「6万8000円以上」へと更に拡大する方針だ。そして、その次となる5年後以降にはいよいよ第3号制度廃止への“2段ロケット”の議論が控えている。
今年の年金財政再計算に先立つ昨年9月14日の社会保障審議会年金部会では、民間委員から「適用拡大を進めて、第3号を縮小していく中で、その後についても時期を見て早めに議論を進めていくことも必要ではないか」という意見が出され、本丸である「無就業」(年金課長発言)の専業主婦の年金改革が促された。経済ジャーナリストの荻原博子氏が語る。
「いまや年金財政は自転車操業状態です。だから厚労省は目先の保険料収入を増やすために第3号被保険者の主婦になんとしても年金保険料を払わせたい。そのために厚生年金加入要件をどんどん拡大してパート主婦の給料から保険料を天引きしている。最終的に残る収入のない第3号被保険者には、週刊ポストが指摘しているように、国民年金保険料を払ってもらうか、年金を半額だけ支給するといった制度変更が行なわれることは十分に考えられる」
サラリーマンの妻の保険料は、すでに夫や独身サラリーマンが負担している。その第3号被保険者から新たに保険料を徴収するのは“二重取り”であり、取るなら夫や独身者の保険料を大幅に減額しなければ不公平だ。しかし、そんな議論は全くない。
国が“不公平の是正”というロジックを使うのは、負担増、給付減の口実になる時だけだ。過去の年金部会での厚労省作成の資料(2011年9月)では、第3号の制度について、〈特に共働きの妻や独身女性に不公平感〉が生じていると説明し、縮小を進めようとしてきたことからも明らかだ。
正当な年金受給権を奪われかけている専業主婦とその夫こそ、世帯収入を守るために国に対して声を上げるべきではないだろうか。
※週刊ポスト2019年5月31日号