「ペット=家族」という認識が広まり、富裕層の中には、「ペットに財産を遺せないものか」と、考える人もいるだろう。「紀州のドン・ファン」こと故・野崎幸助氏(享年77)は、愛犬のイヴちゃんに遺産を遺そうとしたことも報じられた。世話をしてきたペットに自分の全財産を相続させることは可能なのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
今年2月、ファッション界の重鎮、カール・ラガーフェルドが亡くなり、驚いたのは彼の巨額な遺産が、すべて飼い猫に贈与されたことです。日本でも遺書に記せば、飼い猫や飼い犬に財産を与えるのは可能なのでしょうか。また、飼い主の遺産を他人に贈与することで、その人が死後もペットの世話をしてくれますか。
【回答】
ペットに遺産相続や贈与はできません。世話ができる身寄りがいなければ、ペットの飼育を信頼できる人や施設などに頼むしかありません。ただし、遺言で飼育を義務づけて遺産を譲る(負担付遺贈)ことはできます。受遺者が義務を履行しない場合、相続人や遺言執行者が遺贈を取り消すことも可能です。
しかし、受遺者が遺贈を断われば、実行不可能です。そこで死亡時に効力が生じる死因贈与契約を結び、飼育を約束させる方法も考えられます。これらの方法で、お金を贈与してしまうことが心配なら、費用を預ける方法もあります。