生前、お金を預けて死後のペットの世話を委任すると、死後も効力を有する準委任契約になります。飼育に予想外の負担が発生したようなやむを得ない場合を除き、契約を解除することはできません。
委任者の地位は相続人が相続し、飼育状況の報告を受け、しかるべき指示や違反した場合に解除もできます。ただ、この方法では預けたお金が受任者の財産と区別されていない場合が問題で、受任者等に債権者がいれば、差し押さえを受けるかもしれません。
この点を考えると、信託の利用が効果的です。信託受託者に財産を信託しておき、そこからペット飼育者へ飼育費を払ってもらうやり方です。信託受託者に預けた資金は、ペット飼育のための信託財産として、受託者の財産とは別に管理され、受託者の債権者の追及を受けることはありません。
ペット飼育が困難になれば、生前から死後も通して信託を利用できます。飼育費を実質的に負担する元の飼い主の死亡後は、ペット所有権の相続人が信託の受益者になります。受益者は受託者に信託事務の報告を求めるほか、不適正な事務運営の中止を請求できます。 とはいえ、契約は複雑なので、専門家の協力が不可欠です。
【プロフィール】1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2019年5月31日号