2015年に厚生労働省が行った調査によれば「50才まで一度も結婚したことがない人」の割合を示す生涯未婚率は男性23.4%、女性14.1%。つまり男性の約4人に1人、女性の約7人に1人が一生結婚しない。さらに、未婚者のうち、親と同居する20~50代は約1430万人で、未婚者全体の約7割を占める。この人数は1980年からの35年でおよそ3倍に急増したという。
「家を出ない」「結婚しない」子供が社会問題になりつつあるが、当の子供からすれば、実家は電気・ガス・水道に加えてお菓子やご飯にWi-Fi付きで、安心して自由を謳歌できる最高の場所だ。
別掲のグラフで示したように、ひとり暮らしにはお金がかかる。家賃はもちろん、敷金礼金などの初期費用、光熱費、食費など、かかるお金が青天井になる。もし東京都内で暮らしたとしたら、その額は初期費用で約50万円。その後も、月々15万円前後はかかる計算だ。日本社会で格差が拡大するなか、収入が少ないとなかなかひとり暮らしに踏み切ることができない現実もある。
子供が独立せずに実家に住み続けることに対して、当事者は何を思うのだろうか。28才の娘がいる主婦の辻原綾子さん(仮名・56才)が語る。
「ブラック業界といわれることもある飲食業界で働く娘はとにかく激務。土日も朝から晩まで働くのにお給料はそれほど高くありません。毎晩日付が変わる頃にボロボロになって帰ってくる娘に、『自分でご飯を作りなさい』とか、『洗濯しなさい』なんて、かわいそうでとても言えず、家のなかのことはすべて私がやっています。朝もすっぴんで出て行く娘に、彼氏がいる気配もないため、当然結婚の予定もありません」
今はまだ親が元気なので生活が成り立っているが、10年後も同じように娘の面倒を見られるかと問われると、「率直に言って自信がない」と辻原さんはため息をつく。