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安倍政権の「働き方改革」は男性中心社会の延長線上でしかない

 これに伴い、この4月から施行されたのが、「働き方改革関連法」だ。「1日8時間まで」という労働時間を定めた「労働基準法(労基法)」が1947年に制定されて以来、実に約70年ぶりの大改正となった。

「働き方改革関連法の骨子は大きく2つ。第1が『長時間労働の是正』です。これまで事実上の青天井だった残業時間の上限を原則『月45時間・年360時間』とし、違反した企業には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

 第2に、正社員と非正規社員の待遇格差を縮める『同一労働同一賃金』が盛り込まれました。同じ職場で働く正社員との間に、不合理な待遇差を設けることが禁止され、パートや契約、派遣社員であっても有給休暇の取得が義務づけられるようになりました」(常見さん)

「残業時間」を減らせば過労死は防げるのか

 特に大きな目玉である「長時間労働の是正」は、2015年12月に過労自殺した電通社員の高橋まつりさん(当時24才)や、2013年に過労死したNHK記者の佐戸未和さん(当時31才)など、相次ぐ事件を背景に強く推し進められた。

 しかし、「残業時間」さえ減らせば、そうした悲劇はなくなるのだろうか。『女性はなぜ活躍できないのか』(東洋経済新報社)の著者で、日本女子大学人間社会学部教授の大沢真知子さんが指摘する。

「電通の高橋まつりさんは、自殺の数日前、『髪がボサボサ、目が充血したまま出勤するな』『女子力がない』などと上司に注意されたことをツイッターに綴っています。これは、非常に重要なメッセージです。『女子力』という言葉で、若い女性新入社員に“女性性”を強要する性差別です。女性の自信を失わせることにつながります。決して労働時間を制限するだけで解決する問題ではありません」

 元伊藤忠商事会長、元中国大使の丹羽宇一郎さんは『文藝春秋』6月号への寄稿文『「働き方改革」が日本をダメにする』の中でこう綴る。

《過労死という問題を長時間労働に原因を求めてルール作りをしてしまうと道を誤る。というのも過労死の原因には、往々にして上司と部下の関係があるからです。つまり、過労死を防ぐために最も重要なのは、直属の上司によるケア。過労死を減らしたいのなら、最近増えているといわれる部下に無関心な上司こそ問題にすべきです。》

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