勝久氏とともに会社を追われた長男の勝之氏と久美子氏の確執がそれであり、しかも久美子社長とよく似た性格の母親が長男を溺愛してきた。こうした人間模様はしばしばシェークスピアの悲劇「リア王」にたとえられてきた。
そこに久美子氏と共闘した弟妹の問題も加わる。勝久氏は大塚家具の会長時代、久美子氏の希望で自ら保有する大塚家具株を資産管理会社・ききょう企画に譲渡し、ききょう企画が発行した社債と交換した。会長退任後、その社債の償還を求める裁判で勝久氏が勝ち、償還金を支払うために久美子氏と弟妹3人は銀行から17億円もの借金をしたとされる。
「その返済は大変で、久美子氏と弟妹は父親に対して複雑な感情を持っているはず」(大塚家具関係者)
久美子氏としてはその弟妹の面倒を見なければならない。妹婿の佐野春生専務をナンバー2に据え、弟を社長室長に置かなければならないのはそうした事情によるものだという。親子よりも兄弟間の確執が、問題を根深くしている。
業績面では、大塚家具は自ら打ち出したイメージに苦しめられている。高価格帯だけでなく、中価格帯へも守備範囲を広げた結果、低価格帯の顧客には割高な価格設定に映り、高価格帯を志向する顧客からは「安物を売るようになったの?」と誤解されている。新しい家族を迎えたり、新居を構えたりする門出に、家庭不和のイメージが払拭できない大塚家具は選びにくい面もあるだろう。
とはいえ、独立した勝久氏が率いる匠大塚の経営も決して好調とは言えない。帝国データバンクによると、同社は2018年3月期の営業赤字が14億円で、37億円の債務超過。識者からは、親娘が関係を修復したうえで大塚家具と匠大塚が経営統合するしか再建の道はないとの指摘もあるが、ゴーイング・コンサーン(継続企業)に疑義がついた大塚家具と、債務超過の匠大塚が統合すれば、むしろ共倒れになるリスクも抱え込む。