「ミニマリスト」とは持ち物を減らし、必要最小限のものだけで暮らす人のこと。クローゼットにTシャツとパーカしか入っていないというFacebook創業者・ザッカーバーグ氏をはじめとして海外セレブの実践者も多いというが、そんなライフスタイルを実践するうえで高いハードルになるのが、家族の理解だ。
金融機関に勤務する鈴木佳子さん(仮名・58才)は、3才年上の夫とふたり暮らし。登山が趣味の夫は、若い頃から世界中の山を登っては、記念のペナントを集めていたという。
「私は全く共感できないのですが、夫はペナントを見て登った山のことを思い出すんだそうです。だけどそう言いながら『思い出の品』が詰まった段ボール箱は10年以上も開けられたことがない。3年前に引っ越した時に、私の独断で、勝手に捨てました。夫はモノを捨てられない性格なので、いちいち相談したら、いつまで経っても片づかないですから」(鈴木さん)
夫は鈴木さんがペナントを捨てたことに全く気づかず、毎日は平穏に過ぎて行った。ところがしばらくして、親しかった登山仲間が亡くなり、葬儀に出たことがきっかけで、“思い出の品”がないことに気づいてしまった。
「友人の突然の死に夫はかなり落ち込んで、葬儀の夜、彼との登山の思い出を話してくれました。そこから自然とペナントの話になって──この状況でシラを切ることは、どうしてもできず、正直に捨ててしまったことを打ち明けるよりほか、ありませんでした。すると夫は激怒した後、すごく悲しそうな顔をして、家を出て行きました」(鈴木さん)
結婚してはじめての“家出”だった。3日後に「やっぱりひとりでご飯を食べるのは、寂しい…」と帰ってきた夫に、鈴木さんは心から謝罪し、「これからは夫の荷物に手をつけない」と約束したという。