「だけどすぐに後悔しました。ペナントには懲りたのか今度は、山に行くたびにTシャツを買ってくるようになったんです。捨てられない性格は変わらないので、どんどん増えていきます。ほかには、もう履けなくなった登山靴も、思い出が詰まっているから取っておくというんです。荷物は家に入りきらないから、倉庫を借りて管理しています。月々の倉庫代はばかになりませんが、もう勝手に捨てるわけにはいかないし、どうしたものでしょう…」(鈴木さん)
離婚問題に詳しい堀井亜生弁護士は、「夫婦間でも勝手に捨てることは犯罪にあたる」と言う。
「趣味のグッズやコレクションなど、配偶者のものを勝手に捨てると、個人の特有財産を処分したとして、刑法261条の器物損壊罪にあたり、3年以下の懲役または30万円以下の罰金となります。処罰には被害者による告訴が必要なので、実際に罪に問われる可能性は極めて低いですが、黙って捨ててしまうのはよくありません」
犯罪とまではいかなくても、離婚理由の1つになることは少なくない。
「実際に離婚相談を受ける際に聞いた事例ですが、夫の過去の預金通帳をすべて捨ててしまったケースがありました。ほかには、夫の卒業アルバムや集めていたレコードを捨てたり、持ち物をメルカリで勝手に売ったりとさまざまです」(堀井さん)
“ミニマリスト”という言葉を浸透させ、「ものの手放し方」の講座を開く佐々木典士さんは、「講座を受講する皆さんにも、相手の承諾なしに捨てるのは、いちばんやってはいけないことだと伝えています」と話す。
とはいえ、段ボール箱にいっぱいの夫のTシャツを前に、鈴木さんは頭を抱える。
「夫だけでなく、私の親も捨てられないタイプ。老親の住む一戸建てにはものがあふれて、もはや自分たちでは片づけられない状況。それを見ていると、やっぱり元気なうちに要らないものを片づけておかないと、安心して暮らせません」
※女性セブン2019年6月20日号