サラリーマンの定年後の家計を支える最も大きな柱の一つが退職金だ。中小企業の退職金の平均額は1203万円(東京都「中小企業の賃金・退職金事情」、2018年)、大企業の大卒総合職では2256万円(経団連「退職金・年金に関する実態調査結果」、2018年)に上る。
では、この虎の子資産を何に活用すれば安心の定年後生活を送れるのか――それを考える上で注目すべき大規模調査がある。
シンクタンク「フィデリティ退職・投資教育研究所」が退職金を受け取った男女8630人を対象に2015年に行なったアンケート調査だ。そのなかで「使い途」を聞いた質問への答えで最も多かったのは23%の「将来、生活費に使う」。先行きの見えない老後のために当面は貯金をするという消極的な選択が1位だった。
僅差の2位は「ローンの返済」(21%)、3位「日々の生活費(19%)」と続く。このほかの回答は「住宅や車等」「趣味」「家族・子供への贈与」だった。
内訳の詳細はグラフに掲載したが、様々な“選択肢”があるとわかる。ファイナンシャルプランナーの森田悦子氏がいう。
「突然の病気で入院を強いられることもあれば、ライフスタイルの変化でせっかく買った車を手放さなくてはならないこともある。定年前にはなかなか気付けない落とし穴があるからこそ、どんな“不測の事態”が起こり得るのかを知った上で、適切なタイミングと配分で退職金の使い途を選択していくことが大切です。
退職金をもらった直後に使い切る人はほとんどいませんから、すでにもらった人でも様々な体験談から学ぶことは多い」
本当に生活を豊かにする「退職金の使い方」とは何なのか、あらためて考えておきたい。
※週刊ポスト2019年6月21日号