アベノミクスの成長戦略の司令塔とされる「未来投資会議」で、政府は「70歳までの就業機会の確保」を企業の努力義務にする方針を打ち出している。はたしてこれは日本企業にとってどのような影響を与えるものなのか。経営コンサルタントの大前研一氏が解説する。
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以前、アベノミクスの成長戦略の司令塔とされる「未来投資会議」を徹底批判したが、またしても耳を疑うような愚策が報じられた。政府が同会議で「70歳までの就業機会の確保」を企業の努力義務にする方針を打ち出したのである。
その内容は【1】定年廃止【2】70歳までの定年延長【3】継続雇用制度導入(子会社・関連会社での継続雇用を含む)【4】他企業(子会社・関連会社以外の企業)への再就職の実現【5】フリーランスで働くための資金提供【6】起業支援【7】社会貢献活動参加への資金提供―の七つの選択肢を設定し、どれを採用するかは労使で話し合う、というもの。厚生労働相の諮問機関・労働政策審議会の審議を経て、来年の通常国会での法案提出を目指す。
まさに重箱の隅をつつくマイクロ・マネージメントの典型である。なぜ、こんなバカげた議論をしているのか? 理由は明白だ。「人生100年時代」を迎え、年金受給開始年齢の70歳への引き上げが不可避だから(政府は年金支給開始年齢の引き上げは行なわないとしているが)それまで働かせようというのである。
だが世界の潮流を見ると、先進国の企業は固定的な社員を減らす方向に行っている。逆に、まさに“終身雇用”となるような社員を増やそうと考えている企業は寡聞にして知らない。