昨今、社会的にクローズアップされている大人のひきこもり問題。内閣府は今年3月、初めて中高年(40~64才)を対象にひきこもりの実態調査「生活状況に関する調査(平成30年度)」を実施した結果、中高年のひきこもりが全国に61.3万人いることがわかった。
「大人のひきこもり」が増えている要因として、1990年代半ばから約10年にわたって続いた就職氷河期で新卒採用が大幅に抑制され、正社員になれない若者が社会に出るタイミングを逸して、そのままひきこもりになっていることなどが挙げられている。
また、コンビニやインターネットの普及といった生活環境の変化により、直接人と顔を合わせなくても生活が完結できるようになった点も影響しているのではないか、との指摘もある。
だが、ひきこもりは周囲の環境のみならず、先天的な要因から生じる可能性もある。ひきこもりの現場を20年以上取材してきたジャーナリストの池上正樹さんが話す。
「発達障害の1つで、対人関係の障害や、コミュニケーションの障害などが特徴である『自閉症スペクトラム障害』を含めた発達障害は、かつては子供の問題であって、『成長すれば自然に治るものである』と誤解されていました。最近になって発達障害は、『生まれつきの脳の機能の障害』であることがわかってきています。社会に出てから理解されずに苦しんで、大人のひきこもりの原因になることもあります」(池上さん)
琉球大学准教授の草野智洋さんが指摘する。
「厚生労働省は、2010年に発表したひきこもりガイドラインで、『ひきこもりの約3分の1は精神疾患が、約3分の1は発達障害が背景にある』としています。仕事や人間関係で悩んでいた人が、発達障害だったとわかって前向きになれた例もあります。悩んでいるのであれば、一度精神科を受診してみるのもお勧めします」
政府は6月11日、「ひきこもり対策」として「3年間で30万人の正規雇用を増やす」と打ち出した。だが、これだけ複雑にいくつもの要因が絡み合っていることがわかった今、単に雇用の受け皿を増やせば済む話ではない。目をそらすのではなく、まずは寄り添い、彼らの声に耳を傾けることが大切だ。
※女性セブン2019年7月4日号