社会問題としてクローズアップされている「大人のひきこもり」の問題。内閣府は今年3月、初めて中高年(40~64才)を対象にひきこもりの実態調査「生活状況に関する調査(平成30年度)」を実施した。調査では、中高年のひきこもりが全国に61.3万人いることがわかった。
「家族構成」に目を向けると、内閣府調査では、ひきこもりの半数以上が「母」と同居する一方で、3人に1人以上(36.2%)が「配偶者」と同居する既婚者であるという驚きの事実も浮かび上がった。同居対象としては、3位に「父(25.5%)」、同率3位に「子(25.5%)」と続く。
ひきこもりの夫を持つ主婦・岸田さん(57才・仮名)が話す。
「夫は自動車部品を作る技術者でした。夫が50才の時、社内でも評判の悪い、年下の上司の下に就くことになったのです。もともと真面目で気の優しい人だから、乱暴な物言いやパワハラにも耐えていたのですが、毎日罵倒されるうち、不眠になり、些細なことにこだわり始め、気が立つようになりました。どんどん悪化して、気づいた時には、一歩も外に出られなくなっていた。退職後、転職活動もしていましたが、それも最初の半年だけ。なし崩し的に5年が経ちました」
岸田さんは、住宅ローンがまだ10年残っていたが、幸い夫の親が援助してくれ、路頭に迷わずに済んだという。
「夫は、もう昔の優しい夫ではありません。ちょっとでも想定外のことが起こると、パニック状態になり、ひたすら謝ったかと思えば、次は何かに強く怒り始めます」(同前)