ここまで親が転勤族だった子どもたちの意見を紹介してきたが、当の親の立場としては子どもたちへの影響をどう捉えているのだろうか。数年前に定年退職したSさん(60代/男性)が語る。
「私が所属していた組織は、大卒で入って60歳で定年を迎えるまで、2年に1度、必ず転勤があり、基本的に同じ所には2度行きません。38年間いましたから、19か所で暮らしたことになります。その大半は引っ越しを伴うもので、文字通り日本中に住みました。私は子どもが2人いますが、上の子どもが中学に入るまでは家族で移動していたので、下の子は4つの小学校に行っています。そこまで転勤が多いと、もう子どもも驚きませんし、『次はどこ?』という感じでしたね」
親の立場としても望んで転勤を繰り返しているわけではないだろうが、それについていかざるを得ない子どもたちも、生活の変化に対応していくのはなかなか大変なことだろう。