日本がAI(人工知能)の分野で世界と戦っていくために必要な教育とは、どのようなものか。経営コンサルタントの大前研一氏が、海外の事例をもとに考察する。
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スイスのビジネススクールIMD(国際経営開発研究所)が発表した2019年の「世界競争力ランキング」で、日本は30位と前年より5つ順位を下げ、比較可能な1997年以降で最低となった。アジアでは中国(14位)、台湾(16位)、マレーシア(22位)、タイ(25位)、韓国(28位)よりも下で、インドネシア(32位)に近い。ちなみに1位はシンガポール、2位は香港、3位はアメリカだった。
ただし、このランキングは、あまり気にする必要はない。シンガポールや香港の企業はIMDを崇め奉り、プログラム参加者を大量に送り込んでいる。台湾も同様で、IMDのドミニク・テュルパン学長が来ると経済界を挙げて大歓迎している。つまり、授業料収入が多い国・地域の順位が高くなるように評価項目が設定されているきらいがあり、IMDのランキングが下がったからといって一概に国際競争力がなくなったとは言えない、と私は見ている。
だが、そうしたランキングの問題はともかく、グローバルな競争力がある人材を輩出できているかどうか、ということは国家にとって非常に重要だ。その点、今の日本は大量生産・大量消費時代の人材教育手法のままで、お粗末極まりない。