「40代までに年収800万~1200万円くらいあった家計には問題が潜んでいることが多い。
サラリーマンの場合、50歳以降は収入が上がらず、むしろ下がっていくことがほとんどですが、節約を意識しなくても不自由ない暮らしを送っていた人ほど、年齢変化に伴う収入減や支出増に対応できない。つまり、老後が危なくなる。問題の本質は収入の多寡ではありません」
前出・荻原氏が取材した中堅メーカーの50代営業部長のケースはその典型だ。
妻は大学時代の同級生で、大学2年生の娘、高3の息子の4人暮らし。手取りで月収約50万円、ボーナスも合わせれば額面で年収約1000万円。50代前半男性の平均年収は656万円(民間給与実態統計調査、2014年)だからかなり恵まれた環境といえるだろう。
ところが、この男性は最近になって突然妻から、「貯金が100万円を切ったので小遣いを減らしてもいいか」と相談され仰天した。
「この家では、5年前まで500万円ほど貯金があったそうです。マンションのローンが毎月10万円、夫の小遣いが同10万円、食費・各種公共料金などを差し引いても毎月13万円ほどが手元に残り、そこから貯金に回せていた。
しかし、長女が私立大学に進み、私大を目指す弟の塾代もかかるようになって家計は赤字に転落。にもかかわらず“年1回は家族で海外旅行”といった生活を変えられず、貯金があっという間に消えてしまった」(荻原氏)
※週刊ポスト2016年5月27日号