「年金だけでは暮らせない」「今から2000万円も貯められるだろうか」──6月に公表された金融庁の報告書が、国民の不安を煽り続けている。しかし、マネーの専門家らは「そこまで悲観的にとらえることではない」という。実際に年金で生活している高齢者からは、「年金だけで充分暮らせる」という声も出ている。“2000万円”という数字に踊らされず、生活を見直す力があれば、誰しも幸せな老後を過ごすことができるというわけだ。
とはいえ、老後を堅実に生きるためには「支出の見直し」が欠かせない。『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)の著者で、久留米大学商学部教授の塚崎公義さんが語る。
「郊外に3LDKの一戸建てを持ち、子供が巣立ったのなら、都心のワンルームに夫婦で引っ越した方がいい。光熱費が減り、車も必要なくなります。私も車を手放しましたが、都心なら公共交通機関が便利ですし、駅まで歩くと運動になるのでジムに通う必要もありません。ぜいたくにタクシーを使っても、車があった生活よりお金はかかりません」
「住居」に続き、「自動車」と「保険」も有力な見直し候補となる。ファイナンシャルプランナーの森田悦子さんが語る。
「最近は高齢ドライバーの運転が社会問題化していますが、1500cc程度のコンパクトカーを手放せば、維持費だけでも年間50万円浮きます。公共交通機関が発達した都会なら車なしでもさほど不自由はなく、地方の場合も最近普及しているカーシェアリングが使える地域なら、自家用車を手放すことは可能です」