相続対策に有効な「生前贈与」。教育資金の一括贈与は1500万円まで非課税で、毎年、財産を子供や孫などに贈与する「暦年贈与」であれば年間110万円まで贈与税が非課税となり、結果的に相続時の課税財産を圧縮できる。
ただし、亡くなる前の3年間に暦年贈与した金額は相続税の課税対象となるから注意が必要だ。では、生前贈与は何歳から始めるのが得なのかというと、「65歳」がひとつの目安となる。「夢相続」代表の曽根恵子氏がいう。
「60歳で財産目録を作成した後、65歳までフルタイムで働いたとしても、それ以降はパートタイム勤務などで収入は限られてくるので、財産をいくらくらい子供に残せるのかのメドが立ちます。
相続税がかかる金額であれば、その段階で早めに生前贈与を始めて相続財産をちょうど相続税がかからない金額まで減らしておくのがいいでしょう。年を取ると認知症のリスクも高まるので70代や80代まで引き延ばす必要はありません」
例えば相続人が妻と子供1人であれば、遺産4200万円までは相続税がかからない。小規模宅地等の特例など相続税の優遇措置を利用しても総資産5000万円が残るなら、800万円分は先に子供に贈与しておけばいい。
贈与の方法も暦年贈与や教育資金の一括贈与だけではない。夫婦、親子、兄弟姉妹など扶養家族の間で生活費や教育費を贈与する場合、「通常必要とされる金額」であれば非課税になる。
親が65歳過ぎであれば、子供はちょうど子育て世代というケースが多いだろう。
「子供が結婚して孫が生まれたものの、給料が低くて生活や養育費が大変そうだ」という状況であれば、親が生活費や孫の保育所の費用などを毎月仕送りしてやる。相続税対策で将来生前贈与するのなら、少し早めでも子供がお金が必要な時期に贈与した方が感謝される。
※週刊ポスト2019年8月2日号