同じような生活をしていても、幸せな老後を迎えられるひとと、悲惨な結末を迎えるひとに分断されている。新著『上級国民/下級国民』が話題の作家の橘玲氏が、誰も口に出せない「老後格差」の真実明かす。
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参院選でも大きな争点となった「老後資金2000万円不足問題」が大炎上したが、発火点となった金融庁の報告書では、「平均的な世帯」は持ち家で2000万円程度の金融資産を保有しているとされる。だが金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」では、2000万円以上の金融資産を保有しているのは、70歳以上の世帯の27.9%に過ぎない。
「平均以下」だといわれた残りの7割超が、“「下級高齢者」として生きていくしかない”と宣告されたと考え、怒りや不安に駆られたことで政界を揺るがす大騒ぎになったのだろう。
同じ調査では、70歳以上の世帯の28.6%が「金融資産を保有していない」と回答している。数にして700万人にも上り、高齢化の進行によってこの層が1000万人に達するのも時間の問題だろう。
日本の高齢者は、裕福な3割(上級高齢者)と年金以外に生きていく術がない3割(下級高齢者)に分断されているのだ。
「持ち家=裕福」という誤解
「持ち家は裕福で賃貸は貧乏」と誰もがごくふつうに考えている。だがこの常識も崩れはじめている。
前出のデータを分析すると、「金融資産を保有していない」と回答した世帯のじつに78.8%もが「持ち家」に住んでいる。持ち家世帯全体を見ても金融資産ゼロは約20%で、持ち家が5軒並んでいればそのうち1軒は貯金がほとんどない。