「専業主婦は楽でいい」とされたのははるか昔の話。現実には、夫の収入だけでは家族が食べてはいけず、パートでもなんでも、妻が働かざるを得ない状況だ。共働き世帯が専業主婦世帯の2倍以上になったことで、専業主婦の社会的地位はどんどん低下している。それでは、女性はどう生き抜いていくべきなのか。最新著『上級国民/下級国民』(小学館新書)が話題の作家・橘玲さんが「これからの女性の生存戦略」を語る。
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先進国を中心に世界的に加速する「上級国民/下級国民」の分断によって、働かなければ男も女も「下級国民」に落ちてしまいます。「そんなこと言われても、これまでずっと専業主婦をやってきて今さら…」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。
私の知人で、大学卒業後にすぐに結婚し、一度も働かないまま専業主婦になった女性がいます。彼女は子育てを終えた40代半ば、一念発起して学習教材の会社で契約社員として働き始めました。
彼女には男女2人の子供を育てた経験しかなかったのですが、そのうち、上司には言いづらい悩みなどを若手社員から相談されるようになりました。厳しい事を言っても、彼らにとっては母親に怒られているようなものなので、それほど気にならないのです。
新しく異動してきた責任者も、部下には聞きにくいことでも年上の契約社員である彼女には相談しやすいらしく、社内のあちこちで頼られる存在になりました。そして50才の時に、一部上場のその会社から「正社員になってくれないか」と打診されたのです。
彼女は、正社員の話は断ったそうですが、60代になった今も時給2000円で週3日ほど働いています。「70才まで続けたい」と言っているので、働き始めてからの総収入は5000万円を超えるでしょう。これだけのお金があれば、老後の安心感はぜんぜん違うはずです。