住まい・不動産

「持ち家なのに貧困」な人は多い、高齢富裕層が賃貸を選ぶのは当然か

 日本の社会には、「持ち家なのに貧困」という膨大な層が隠されている。なぜこんなことになるかというと、住宅ローンを組んでマイホームを購入するのではなく、若い時から実家で暮らし、そのまま住み続けるひとたちが一定数いるからだろう。

 家を出るには、それなりの収入がある職業につき、引っ越しのための貯金も必要だ。そのお金がないと、「持ち家(実家)に閉じ込められる」ことになる。

 家賃がいらなければ、病気やケガなどの不慮の出来事がない限り、年金だけでなんとか暮らしていける。そう考えれば、貧困層の8割が持ち家なのは不思議でもなんでもない。

 それに対して富裕層を見ると、金融資産1000万~3000万円のおよそ2割が持ち家に住んでいない。年齢別のデータがないため断言できないが、裕福な高齢世帯が「賃貸」に住み替えるからではないだろうか。

 高齢になると一戸建てを管理するのは困難になる。庭の手入れやゴミ出しは億劫だし、天井の電球を交換するのも転倒の危険がある。そう考えれば、お金持ちが持ち家にこだわる合理的な理由はない。

 80歳になったら食事や見守りのあるサービス付き高齢者住宅に、90歳になったら介護の行き届いた有料老人ホームに移る――こちらの方がずっと楽なのだから、上級高齢者が「賃貸」を選ぶのは当たり前なのだ。

◆橘玲(たちばな・あきら):1959年生まれ。作家。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎文庫)『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)などベストセラー多数。新刊『上級国民/下級国民』(小学館新書)が話題。

※週刊ポスト2019年8月16・23日号

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