金融資産は毎月の収入を積み立て運用した結果だから、収入格差よりも資産格差の方が大きくなる。これからは確実に定年後も働く社会がやってくるが、そうなると「健康で長く働ける上級高齢者」と「不健康で仕事のない下級高齢者」の格差はますます拡大していくだろう。
長く働くことは、金銭面のメリットだけではない。年をとってからも新しい人間関係をつくれる女性と違い、男性の場合、人間関係はほぼ仕事から生まれる。
家族がいればまだいいが、退職後、平日から自宅にいる夫を疎んじる妻は少なくない。離婚ともなれば家の掃除もできず、ゴミ屋敷と化した自宅で孤独に暮らす下級高齢者になりかねない。実際、孤独死のうち4人に3人は男性なのだ。
◆橘玲(たちばな・あきら):1959年生まれ。作家。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎文庫)、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)などベストセラー多数。新刊『上級国民/下級国民』(小学館新書)が話題。
※週刊ポスト2019年8月16・23日号