長引く不況の中でも全体の売り上げが伸びている回転ずし業界。最近ではスマホアプリから予約できる店舗も増えているが、それでも休日ともなれば、2時間待ちもザラだ。一方、昨今の回転ずしブームで、エンガワ目的で乱獲されたカレイなど、漁獲量の急減した魚介類の仕入れ値が跳ね上がっている。回転ずし業界はいかにして「安くておいしい」を実現させているのか。
2000年前後、業界の過当競争は熾烈を極め、値段を下げる策として回転ずし店はこぞって代用魚を使用した。マダイと歌いながらアフリカ原産の淡水魚「ティラピア」を使ったり、江戸前アナゴとして「マルアナゴ」というウミヘビ科の魚を出す店もあったという。だがエスカレートする状況を受け、2003年に水産庁が「魚介類の名称のガイドライン」の運用を開始。紛らわしい呼び方を事実上禁じることにより、“モドキネタ”は徐々に姿を消していく。
そうした状況から、各社工夫を施し、最近は「代用」ではなく、品不足のネタに代わる新たな「商品開発」を進めるようになった。最新の加工技術を用い、“食用不適”の食材からおいしいネタを作り出す技術も進歩している。外食業界紙記者が語る。
「貝は人気ネタのひとつで、ホタテやツブ貝などは常に品不足。そこで最近は新たな貝をメニューにするべく、世界の貝類資源に目を向けて商品開発を行っています。たとえば東カナダ沖で捕れる『黒ミル貝』は、独特のくせがあり食用にはなりえなかった。くせを抑え、本来の味を前面に出す処理方法が研究され、商品化に成功しています。
また『白トリ貝』も同様に、下処理や切り方を工夫して、寿司ネタにできるよう開発したものです。このように“代用”するのではなく、“新規開拓”に移行しているのが最近のトレンドです」