「おいしいものは高い」が社会の道理。だが、そんな常識はお構いなし、「大トロ1皿100円」を実現する回転ずしに、今日も長い行列ができている。あの人気ネタは、なぜそんなに安くてうまいのか──。そこには企業努力の末に編み出された「激安の秘密」がある。
原価を安く抑えるために各社、新たな人気メニューの新規開拓や、養殖技術の進化にも力を入れているが、低価格を実現する上で重要な流通にも、知られざる工夫がある。回転ずし店の仕入れ担当者が明かす。
「北欧や南米で捕れた魚は、一旦冷凍して、大量に船便で中国やベトナムなどに送られます。人件費が抑えられる国で加工後、再度冷凍して日本に運ばれます。
たとえば、チリ沖で捕れたサーモンは、チリの漁港で冷凍処理した後に船に積み込まれ、ベトナムに運ばれます。ベトナムの加工工場で解凍された後に、カットや下味の処理が行われ、再び冷凍されてから日本に船便で送られるというわけです。2度にわたって冷凍(フローズン)することから、その流通手法を『ツーフロ』と呼びます」
わざわざ、冷凍して運んで、冷凍して運んでを繰り返すのはコストが高そうに思えるが、実はそうではないという。
「ノルウェーやチリで捕れたサーモンを現地で処理するために現地で加工工場を建てる方がコストがかかります。今や、回転ずしのネタの仕入れは、ワールドワイドなビジネスなんです。チリのサーモン、カナダのツブ貝、グリーンランドのカレイ、ペルーのイカ。それぞれの漁港に加工工場を造るより、安い人件費が豊富な中国とベトナムに巨大な加工工場を造って、そこに世界中の水産物を集めて加工した方が、はるかに効率的なんです。