「2人の息子たちには、すべて現金で残したい」──そう語ったのは、1984年のロサンゼルス五輪、1988年のソウル五輪の柔道で2大会連続の金メダルを獲得し、2015年に他界した斉藤仁さん(享年54)の妻、三恵子さんだ。
「仁さんが亡くなった後は、とにかく遺品整理が大変でした。同じ服を何着も買う人だったのですが、もう息子の方が体も大きくなってしまって着られません。子供たちには同じ思いをさせないよう、今から家の中の断捨離を進めています」
そう目を細める三恵子さんは、夫の柔道に対する厳しい姿勢が焼き付いているという。
「仲間内では、“理不尽、イソジン、斉藤仁”なんて呼ばれていたそうですが、子供たちは学校から帰ってきた時に玄関に仁さんの靴があったら、恐怖のあまり学校に引き返していました。でも、仁さんはどれだけ忙しくても子供たちのことを気にかけていて、海外の出張先からでも『子供たちはどんな様子だ』と何度も電話がありました」(三恵子さん)
現在、三恵子さんが生活の拠点としているのは大阪だ。2002年に次男が生まれた年に大阪に自宅を購入して、仁さんが国士舘大学や全日本で指導をする時は、東京・世田谷区にあるもう1つの家と大阪を行き来していた。
三恵子さんは、子供たちへの相続に備えて、将来的には大阪と東京のいずれの家も売却するつもりだと明かす。