実際、橘氏は、ある経済官庁の若手官僚にこの問題について聞いたことがあるという。「社会保障改革はどうなるのか」と尋ねたところ、その官僚から返ってきた答えは「誰も改革なんかに興味ありませんよ」とのことだった。
「『2000万円問題』で明らかになったように、理想主義の官僚がどんな『改革案』を出したとしても、有権者の不安を煽るとして政治家によってすべて握りつぶされてしまいます。そうなると、あとは『ひたすら対症療法を繰り返す』以外にありません。保険料を少しずつ引き上げ、給付を少しずつ減らし、それでもダメなら消費税率を少しだけ上げる。そうやって、2040年を過ぎて高齢化率が徐々に下がっていくまで20年間耐えつづけるというのが、『国家百年の計』を考える官僚のやるべきことだそうです。
平成が『団塊の世代の雇用を守る』ための30年だったとすれば、これから始まる令和の前半は、『団塊の世代の年金を守る』ための20年になるのです」(橘氏)
これが、令和の時代に確実に来る未来なのである。
◆橘玲(たちばな・あきら):1959年生まれ。作家。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎文庫)、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)などベストセラー多数。新刊『上級国民/下級国民』(小学館新書)が話題。